~ASEAN諸国と日本の“国鳥”たちの魅力を探る~
美しい羽根、堂々とした佇まい、独自の鳴き声。
国鳥(National Bird)は、その国の自然・文化・精神性の象徴として、多くの国で制定されています。
今回はブルネイ・ミャンマーを除くASEAN諸国と日本を対象に、それぞれの「国を象徴する鳥」たちを紹介します。
タイの国鳥:シャム・ファイアーバック(Siamese Fireback)
(タイ語:ไก่ฟ้าพญาลอ / Kai Fa Phaya Lo)※日本名:シマハッカン
- 特徴:金属のような光沢を持つ青灰色の体と、赤い顔・脚が特徴の美麗なキジの仲間
- 選定理由:1992年に国鳥に指定。タイの伝説や文学『プラ・ロ』に登場し、勇敢さと優雅さの象徴
- 観察ポイント:カオヤイ国立公園などで野生個体を観察できることも
(Vietnamese: Gà Rừng)
- 特徴:ニワトリの原種に近い鳥。赤・黒・緑の羽が美しく、尾羽が長くカーブする
- 文化的背景:古代からベトナム人の生活に密接。旧暦正月の供物や闘鶏文化にも深く関わる
- 豆知識:東南アジア一帯で見られるが、ベトナムでは特に“祖霊の象徴”とされる
マレーシアの国鳥:ライノセロス・ホーンビル(サイチョウ)
(英:Rhinoceros Hornbill)
- 特徴:巨大なくちばしの上に「角(カスク)」があるインパクト抜群の鳥。ジャングルの守護神のような風貌
- 選定理由:先住民イバン族にとって“聖なる鳥”。サラワク州の象徴でもある
- 出会える場所:マレーシア・ボルネオ島(サラワク・サバ)で野生個体が見られるチャンスあり
シンガポールの“象徴鳥”:クリムゾンサンバード(Crimson Sunbird)
- 特徴:全長約11cmの小さな鳥。オスは鮮やかな真紅の羽と緑の背中が特徴的
- 非公式だが国鳥に近い存在:公式な国鳥の制定はないが、国家植物園や郵便切手にも登場し、現地の人々に広く親しまれている
- 生息環境:公園やボタニックガーデン、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなど都市部でも見られる
インドネシアの国鳥:ジャワワシ(Garuda/ジャワ・イーグル)
- 正式名:Javan Hawk-Eagle(Nisaetus bartelsi)
- 特徴:鋭い目と冠羽が特徴の猛禽類。ジャワ島固有種で絶滅危惧種に指定
- 象徴性:「ガルーダ」はインド神話の神鳥で、インドネシア国家の象徴にも採用されている
- 国家機関でも使用:「ガルーダ・インドネシア航空」のロゴにも関連
フィリピンの国鳥:フィリピンワシ(Philippine Eagle)
- 旧名:モンキーイーグル(Monkey-eating Eagle)
- 特徴:世界最大級のワシ。体長約1m、羽を広げると2m以上にもなる
- 象徴性:誇り高く孤高な存在として、フィリピン独立精神を象徴
- 観察地:ミンダナオ島のフィリピンワシセンターでの保護活動が有名
カンボジアの国鳥:ジャイアント・アイビス(Giant Ibis)
- カンボジア語:អារី (Aari) ※日本名はオニトキ
- 特徴:首とくちばしが長く、優雅なシルエット。全長約1mの大型水鳥
- 国鳥としての意味:かつてクメール王朝の紋章に登場。現在は絶滅危惧種で保護対象
- 生息地:プレアヴィヒア州など、北部湿地帯や保護区での観察が可能
日本の国鳥:キジ(Japanese Green Pheasant)
- 和名:キジ(雉)/学名:Phasianus versicolor
- 選定年:1947年に国鳥に制定
- 特徴:オスは美しい緑の羽と赤い顔が特徴。鳴き声「ケーン!」も印象的
- 文化的背景:桃太郎のお供としても有名。「用心深く勇敢」な象徴として選定
- 見られる場所:田んぼ、里山、雑木林など日本全国
比較まとめ:国鳥たちの“象徴性”早見表
国名 |
国鳥名 |
象徴内容 |
絶滅危惧度 |
タイ |
シャム・ファイアーバック |
優雅さと勇気の象徴 |
低〜中リスク |
レッドジャングルフォウル |
精神的な祖霊・生命の象徴 |
野生では希少 |
|
マレーシア |
サイチョウ(ライノセロス) |
精霊・ジャングルの守護 |
一部地域で絶滅危惧 |
クリムゾンサンバード(非公式) |
小国ながら鮮やかな魅力の象徴 |
安定 |
|
ジャワワシ(ガルーダ) |
国家そのものの象徴 |
絶滅危惧 |
|
フィリピン |
フィリピンワシ |
独立と誇りの象徴 |
絶滅危惧 |
クメール文化の神聖な鳥 |
絶滅危惧 |
||
日本 |
キジ |
勇気と美しさ、農村の象徴 |
安定 |
“空の使者”は国を語る存在
国鳥は単なる鳥類の分類ではなく、その国の誇りや自然観、精神文化の象徴として選ばれた存在です。
旅先で空を見上げたり、野生保護区や鳥類園を訪れたりすることで、
「ただの観光では得られない“その国らしさ”」に気づくことができます。
鳥好きでなくとも、次の旅ではぜひ“空のアイコン”=国鳥たちにも注目してみてください。